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『チェンジング・ブルー~気候変動の謎に迫る』

大河内直彦著(岩波現代文庫)

 

 

 

 

 

 

 

チェンジング・ブルー(大河内直彦)

『チェンジング・ブルー 気候変動の謎に迫る』(大河内直彦)岩波現代文庫の紹介

気候は単に線形的に変化するのでなく、複雑なシステムとして振る舞い、不可逆的なモード・ジャンプ(大幅な飛躍)も伴う。というのが本書から感得すべきポイントだと考える。

本書は2008年に岩波書店から刊行後、2015年に岩波現代文庫に収録された。ブルーは著者の好きな色、空や海、「母なる地球を表す色」(v頁)だ。

気候変動を考えるさいにMISという言葉に出会うことが多い。(海洋酸素同位体ステージ、Marine oxygen Isotope Stage)
http://www.pref.kyoto.jp/kankyo/rdb/eco/rs/2015rs01.html

酸素同位体比は古海水温ないし氷床量を通じて古気候のひとつの指標となるがその原理的なものや研究史などを本書はまとまったかたちで提供してくれる。

また14Cを通じた年代測定についても原理や研究史、課題を解説してくれる。

そしてミランコヴィッチ・サイクルや二酸化炭素による温室効果についても。

また本書からは気候変動において水が果たす役割の大きさがわかる。深層水循環や氷床の盛衰などを通じて。

そしてダンスガー・オシュガー・イベントやヤンガー・ドリアス・イベントなどの話題を通じて、気候変動は緩慢に進行するとは限らず急激に変化する場合もあることが示される。

複雑な気候システムに対して、前例のないペースで二酸化炭素を投入しつづけていることの是非が問題となる。二酸化炭素濃度に比例でなく不可逆的にジャンプする大変化をもたらすかもしれない。

海洋深層水のコンベヤー・ベルトを研究したブロッカーがいったように、「われわれの気候に対してロシアン・ルーレットで遊んでいること自体が問題なのだ」(393頁)。

付言すれば温暖化の因果関係がどうであれ、枯渇性の化石燃料の利用を推進することは正当化できないので、因果関係の複雑さゆえに枯渇性の化石燃料の利用を推進してよいということにはどのみちならないと考える。

本書によって、気候変動自体の歴史、研究史、そして原理的なものをふくめて追いかけることができる。

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