水源の里 市茅野のシャガ
晴れを待って再び大田和を訪ねた。
梅雨時とて、道は依然すべりやすかった。
過日確認する時間のなかった奥の尾根道に行く。
背丈前後の深さに掘られた貫禄のある道であり、大田和への道より、大田和から上のこの道の方が立派である。
宝尾につながるかと考えていたが、ふと尾根が平らになって、小さな台地があり、立派な尾根道はそこで終了していた。
この地点からさらに尾根をのぼった。
顕著な道はなかったが、やがて大飯町との境界尾根に達した。
尾根からは青白く霞む日本海が見えた。
霞のなかにも波の襞が茫漠と感じられるのだった。
大田和の背後の尾根に登れば融け込むような海の展望が垣間見える。
この尾根の裏側はもう宝尾である。
先人は山々を経めぐりながら居住地や山岳仏教の適地を見いだし、山上の生活圏を形成してきたのだろう。
青葉山を取り囲むこの一帯は深い山中でありながら、山より更に存在感の大きな海に全身が融け込んでいき、西方浄土という言葉が口をついて出るようなひとつの世界である。
尾根から谷に降り、横津海に向かっていると鹿に遭遇した。
写真を数枚撮ると、もう鹿は視界から消えていた。